Malzack Blog

— 丸山和訓のブログ —

山岡士郎とカイジ

「いいでしょう。びっくりするモノをお出ししましょう。ただし、勝負は1週間後です。」

こうやって『美味しんぼ』の山岡士郎はすぐに勝負をしかける。仕事をさぼって競馬をしているくらいだから、根っからの勝負師なんだろう。

その勝負師としての資質に、僕は『賭博黙示録カイジ』の主人公カイジを重ねる。想像するにふたりはとても相性がいい。

カイジも根っからのギャンブラーだ。山岡と同様にすぐに勝負をしかける。しかもその底辺ともいえる世界の登場人物は、悪の極みを尽くしている。平気でイカサマをしてくるような輩を相手に、カイジは生き抜いていく。

山岡の住む世界はエリートだ。いくら山岡が不真面目な社員だといっても、そこは銀座の新聞社だ。カイジの住む底辺とは真逆の世界である。

カイジに出てくる悪人と比べると、山岡の相手は大したことはない。フォアグラ信者だって、おいしいアン肝を食べさせれば「私が間違ってました」とすぐに負けを認めてくれる。傍若無人な海原雄山だって、冷静に考えてみると意外と物分かりがいい。ひっくり返したテーブルの片付けだけ目をつむれば、いたって常識人である。

東西新聞の究極のメニュー作りの仲間として、カイジを入社させたらどうか。いまはまだ正攻法でやってくる敵だからいい。しかし本当の悪人に出会ったらどうするのだ。たとえ悪人と出会っても戦わなければ済む話だが、すぐにカッとなって勝負を受けてしまう山岡の性格では危険だ。

負けたら50万円。そのくらいの額の勝負なら山岡は乗ってしまうだろう。しかしその契約書は「10分複利」いう文言があり、それに気づかない山岡は雪だるま式の債務を負ってしまう。凶悪人の前で、東西新聞のチームは圧倒的敗北を味わうだろう。

相手は当たり前のようにイカサマをしてくる。山岡が手配した食材など、裏工作で簡単にすり替えられてしまう。「鉛でできた重い箸を用意して食べにくくする」というような姑息な手も打ってくるだろう。

その結果、山岡も栗田も莫大な借金を背負い、地下の地下で強制労働をするハメになる。帝愛グループの圧倒的搾取の餌食になってしまう。

そこで、カイジである。相手が悪人の場合は、こちらも相当の対策をしなければならない。磁力のついたビール缶で皿を動かしたり、上層階に何トンもの水を蓄えてビルを傾け、相手のスープをこぼしたりするような対策も検討しておいて損はない。

チームに入れると言っても、カイジには味覚がないじゃないか。そう思う人もいるかもしれない。しかし、味覚の部分や外交は山岡と栗田が担当するので、心配には及ばない。グルメと勝負の役割をしっかり分担しようとする提案である。

むしろ味覚の部分にも、カイジには大きな期待を持てるのではないか。強制労働後のビールを飲んだ時の、あのカイジの喜びよう。「犯罪的だ」「染み込んできやがる」というセリフに味わいの表現の才能を感じる。そこに上品さはないが、ただ闇雲に「うまい」というのとは訳が違う。育てがいがあるというものだ。山岡に味覚を教われば、案外いい線いくかもしれない。

カイジはシャバに出たら、パチンコなどせずに東西新聞社に履歴書を持っていくべきだ。山岡の下ならウマも合う。普段はふたりで競馬の予想をして、案件がきたら山岡は方向性をマネジメントし、カイジは実行部隊として出動する。鉄骨を渡ることができるカイジなら、断崖絶壁を登ってツバメの巣だって取って来れる。役割分担することで究極のメニュー作りはさらに実現できるのだ。

カイジには学歴もキャリアもない。しかし東西新聞社は非正規雇用としてでもいいから迎え入れるべきだ。きっと活躍する。カイジにとってもそれが更生の第一歩となる。

ところがカイジの性格を考えると、もし採用に事が決まりそうになったら「俺はどうなってもいいんで、こいつらをお願いします」と45組を連れてくるだろう。

やっぱり入社は難しいかもしれない。

美味しんぼ
賭博黙示録 カイジ

malzackblog@gmail.com
プライバシーポリシー
© 2014 - 2018 Malzack