丸山和訓 × Blog

セラピスト・丸山和訓のブログ

iPhone Classic

20XX年。今回開かれるWWDCは、ものすごいサプライズがあると噂されている。

というのも、新しくAppleに就任したCEOの最初の発表だからだ。彼はまったく別の分野からAppleに引き抜かれた、今までにない経歴の持ち主である。過去、地域再生にミニマリズムを用い、プロダクトの見た目だけでなく、“その土地にあわせた人間らしい暮らし”をデザインし、数々の成功をおさめてきた。

そんなキャリアもあって、世間からは「スローライフ界のスティーブ・ジョブズ」とも呼ばれている。新しいイノベーションをおこせず、売上が低迷しているAppleの未来は、そんな次世代のリーダーに託されたのだ。

重々しさと期待に満ちた会場の中、登壇したAppleの新CEOが、やさしくも堂々とした口調で語り始めた。



2007年、Appleはモンスターを創り出してしまいました。

タッチスクリーンを備えた大画面のスマートフォンは『iPhone』と名付けられ、音楽も聴ける、電話もできる、快適にインターネットもできる、ということで世界中を便利にしました。

iPhoneは人類を豊かにする。そう思われてきましたが、10年以上経った現在、それは残念ながら間違いであることがわかりました。

iPhoneを手に入れた私たちの現在の暮らしは、とても豊かなものとは呼べません。実際に顔をあわせることのない、SNSのバーチャルコミュニケーション。四六時中カットインされる、どうでもいいファストメッセージ。エンディングがなく、永久にレベルを上げ続けなければならないGAME。過剰に私たちの不安や怒りを煽る、ゴシップニュース。これらのことに、寝ても覚めても、そして、移動中も縛られているのです。

また、至近距離で明るい画面を見続けることによる、脳への悪影響。いまや世界的な問題になっている、首にかかる深刻な負担。

これが、私たちが望んだ豊かな未来と呼べるでしょうか?答えは、“No”です。

iPhoneは確かに便利で、まさしく“発明”と呼ぶにふさわしいモノでした。しかしながら、そのモンスターを乗りこなすには、凄まじいほどの自制力が必要なのです。多くの人の場合、そのモンスターを乗りこなすことができず、反対に奴隷になってしまいます。

大事な人が目の前にいるにもかかわらず、画面の向こう側の世界にログインし続け、そして、トイレにまで持ち込むのですから、恋人以上に大事な存在になってしまっているのです(笑)そこまでの存在になるなんて、ジョブズも想像しなかったのではないでしょうか。

そこで、Appleは自らが創り出したモンスターに、ポジティブなダウングレードを施すことにしました。

これは新しい“発明”ではありません。あえて“発明をしない”というスローダウンの選択です。多機能に肥大化しすぎたiPhoneを、あえて単機能に使うことで、人間らしい暮らしを取り戻そう、という提案です。

私たちはこれを、iPhone Classicと名付けました。

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iPhone Classicは、モノトーン画面を採用しました。これにより脳への刺激が抑えられ、過剰なのめり込みを抑えることに成功しました。過去に採用した複数ページにわたる画面、フォルダ機能は削除しました。インストールできるアプリは1画面の中に収まるだけです。通知センターもウィジェットもありません。GAMEアプリをインストールすることも可能ですが、色がないので楽しめないのがほとんどでしょうね。でも、それで何か困ることがありますか?

SNSアプリのインストールは、Apple側で制限をかけました。子供に持たせるiPhoneには制限をつけるのに、大人は寄り道し放題、野放し状態ですからね。iPhone Classicは、SNSを用いない、本当に大事なコミュニケーションにフォーカスするデバイスです。電話番号がわかる人同士のメッセージ、アドレス交換をした人同士のメールはこれまで通り可能です。これにより、あなたのクリエイティブな時間を増やすことができます。

そして、これがもっとも効果的な機能なのですが、Safariをはじめとするインターネットブラウザを削除しました。「なにもそこまでしなくても!」と思う人が多いかもしれませんが、実際に行ったテストでは、92%の人が「インターネットブラウザを削除することで幸福感が増した」と回答しています。ブラウザはなくても、電波は受信していますので、天気やマップ、乗り換え案内のアプリは今まで通り使うことができます。もちろんFaceTimeでのオーディオ通話、iPhone以外の端末との通話も可能です。

インターネットにつながることで全知全能の神になったように感じられますが、それはまやかしです。誰もが無料でアクセスできる情報には価値がありません。とはいえ、どうしても緊急で調べなければならないときのために、面倒なパスコードを入力することで一時的に閲覧することができます。この一手間を加えるだけで、インターネットにアクセスする回数が減り、幸福感を手に入れることが可能になったのです。

そして残念ながら、今までAppleが進化させ続けた、カメラ機能も削除しました。大事な人との食事を楽しむため、すばらしい風景を視覚だけでなく五感で感じるためです。

SNSにもSafariにもアクセスできない。カメラもない。でもAppleは、それらを否定するわけではありません。それらが、「“これからのiPhoneにとって”必要ない」と判断しただけです。

SNSやSafariは、MacBookやiMacで時間を制限して行うようにシフトするべきです。カメラは、もっと優秀かつ専門的で、所有欲を満たしてくれる単機能のモノで揃えるべきです。

このiPhone Classicは多くの機能を削除したために、かなりのコストを抑えることに成功しました。価格は150ドルです。これまでのiPhoneに比べると、たったの15%の価格です。

今日、私たちはもう一度iPhoneをリリースします。ただし、そこにはもう、加えることはしません。究極まで機能を減らした、今までよりも圧倒的にシンプルなiPhoneです。これからのAppleもこれまで通り、シンプルであり続けます。そして、このiPhone Classicを手にすることで最低限の便利さを享受し、都会で暮らしながらもスローライフを楽しむことができることを、断言します。

最後までご静聴ありがとうございました。私がCEOに就任して、初めての製品であるこの『iPhone Classic』を、今は亡きスティーブ・ジョブズに捧げます。



とまぁ、こんな妄想をしてみました。この話はフィクションですが、このモノクロのiPhone Classicは、今あなたがお持ちのiPhoneに簡単な設定をするだけで利用可能です。

・設定→一般→アクセシビリティ→ショートカット→カラーフィルタ
(※この設定のあと、ホームボタンをトリプルクリックするとモノトーンになります。もう一度トリプルクリックすると元に戻ります)

毎日、長時間ディスプレイを見続ける習慣は、脳内ホルモン、自律神経の乱れにつながります。お仕事ならしょうがないですけど、それ以外のときはなるべく控えるのがいいでしょうね。

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